先日、NHKで「後見人が足りない!~鳥取発 成年後見制度の今~」という内容の番組が放映されていました。鳥取市の弁護士・寺垣さんの取り組みから、成年後見制度の現状と課題を探るという内容のものでした。
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって、本人の判断能力が低下した場合に本人の権利や財産を守るひと(「成年後見人」など)を決め、本人を支援する制度です。
成年後見人は本人の財産を管理し、本人の生活や療養看護などに必要な契約などを本人に代わって行います。また、契約締結後もそのサービスが適正になされているか、在宅での生活に無理はないか、施設入所にあたっては、本人の資産の状況から本人に合った施設はどこか、など継続的に本人を支えていく必要があります。そのためには福祉や医療の関係者と連携し、本人の日常生活に関心を持ち続けていくことが大切となります。
成年後見人の業務には事実行為と法律行為があり、事実行為は成年後見人の業務に含まれません。
つまり、本人への実際の介護行為を成年後見人が行うのではなく、成年後見人が介護サービス提供事業者等と契約し、適切なサービスが供給されるよう手配することが成年後見人の仕事となります。
また、スーパーなどでの日用品の買い物なども一般に成年後見人の仕事ではありません。
しかし、実際に成年後見人になってみると、あらゆることが成年後見人に降りかかってきます。
身寄りのない方や親族から援助を受けられない方の場合には、その生活全般についてサポートが必要になるからです。
番組では、90歳になる認知症の男性を福祉や医療の関係者と連携して献身的に支える弁護士の姿が映し出されていました。急に入院が決まったと病院から連絡を受け、着替えなどの必要なものを揃えて病院に向かうシーンもありました。現実的にはそのような事も後見人がやらざるを得ない状況なのです。
この成年後見制度は、制度開始から12年が経過していますが、最近、身寄りのない人や家庭内の不和などで、弁護士・司法書士・社会福祉士など、親族以外の専門家が必要となるケースが急増しているそうです。
ところが、それに対する成年後見人の報酬は十分ではありません。
成年後見人の報酬は、自由に決められるものではなく、成年後見人の行った業務を家庭裁判所が事後的にチェックし、その報酬を定めることになります。
この報酬は、当然に本人の財産から支出されることになるので、本人に十分な資力がない場合には、その財産の範囲内でやりくりすることになります。
番組では、生活保護受給者の方のケースを紹介していましたが、家賃、光熱費、食費等を考えると、後見人への報酬は、おそらく1万円~2万円程度しか支払えないのではないでしょうか。
これでは、あまりにも後見人の負担は重く、現実的に引き受けられる方も少ないと思います。
成年後見制度の利用者は現在約15万人。 これは、200万人はいるとみられる認知症高齢者の1割弱しか利用していない計算になりますが、認知症の高齢者は2025年には300万人台になるとの試算もあり、今後利用者は急速に増えると思われます。
番組を見て改めて抜本的な制度改革が必要ではないか思いました。
平成24年9月13日
司法書士 尹 炳泰