日本ではお葬式や49日後は、一回忌、三回忌と間隔を開けて法事がおこなわれることと思います。一方、韓国では毎年、故人の命日に法事をおこないます。韓国の法事を祭祀(チェサ)といい、故人の三代後の子孫までがおこなうのが一般的です。
祭祀は故人を招く日なので、食べ物やお酒を準備して迎えます。韓国ドラマで祭祀のシーンを見たことがある人もいるのではないでしょうか。実は、このとき供える物、逆に供えてはいけないものが決まっているのです。
まず奥から一列目には神位という、故人の名前を書いた紙を貼った、木の位牌のようなものを置きます。ごはんと汁物、箸とスプーンもここに並べます。
二列目は煎(チョン)と炙(チョッ)です。焼いたり蒸したりした肉や魚です。さらに魚東肉西(オドンユッソ)、頭東尾西(トゥドンミソ)という順序があります。魚料理は東側で肉料理は西側、また魚の頭は東で尾は西、と決まっているのです。
三列目は湯(タン)と呼ばれるあつものです。鶏や魚介などいろいろな種類があります。
四列目は左脯右醯(チャポウヘ)です。小さく切った牛肉を左側に、甘酒を右側に、という意味です。真ん中にはナムルなどを供えます。
五列目には果物と菓子類を並べます。棗栗柿梨(チョユルシイ)といい、文字どおり西から棗(なつめ)、栗、柿、梨と順番が決まっています。棗から梨へと種が増えていくので、子孫繁栄を意味するなどいろいろな説があります。
地方や家によって供え物が違う場合もありますが、棗栗柿梨は絶対とされています。現代のようにスーパーがない時代の人々は、どうやって季節の果物を探したのか不思議です。
他にも故人の好きだったものなどが供えられますが、供えてはいけないものもあります。
たとえば、霊魂を寄せ付けないとされる桃や、聖なる動物とされる鯉などは供えてはいけません。また霊が嫌うといわれる赤色の唐辛子、肉欲の象徴であるにんにくを使ってもいけません。韓国料理には欠かせない唐辛子とにんにくですが、祭祀のときは料理が薄味になるんですね。
祭祀は祖先を偲ぶ大事な儀式であると同時に、親族が集まる貴重な場でもあります。特に現代では大勢が集まる機会もなかなかありません。準備だけでも大変です。そのせいか、その家ごとの簡易なやり方に変えたり、祭祀自体をしない家も増えてきていると聞きます。
しかし、親族が一同に会するのは、楽しいことでもあると思いませんか。
祭祀が連綿と続いてきたのには、きっとこういう訳があるのでしょう。
2012年10月29日
相続安心サポートセンタースタッフ 金