手続

1. 相続事例紹介 사례 소계

1-5 相続放棄について

 

Q在日韓国人である父が亡くなって一年が経ちましたが、父の債権者であるという者から突然、返済を求められました。このような債務があることは全く知りませんでしたが、今から相続放棄をすることはできるのでしょうか。

A. 相続は、被相続人の本国法によることになります。相続放棄の問題も相続問題なので、この場合も韓国民法が適用されることになります。

 相続放棄とは、相続による権利義務の承継を一切拒否するものです。

 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならず、被相続人の財産も負債も一切承継しません。

 韓国民法では、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に放棄することができると規定しています。この点は日本民法と同じ趣旨です。

 実務上よく問題となるのは、3か月の期間を経過した後に相続財産を超える債務が判明した場合です。日本民法では、3カ月の期間の経過は自らが相続人であると知った時であるとしながらも、相当な理由がある場合には、例外的に「相続人が相続財産の全部の存在を認識した時」とする最高裁の判決により、相続債務の存在を知らなかった相続人を救済しています。

ところが、韓国大法院は「相続財産の存在を知らなければ期間が進行しない訳ではない」と期間について厳格に判断していました。

 しかし、それでは相続人に過剰に債務を負わすことになるとして法律を改正し、「相続人が、相続債務が相続財産を超過する事実を重大な過失なくして、期間内に知ることが出来なかった場合には、その事実を知った時から3か月以内に限定承認することが出来る。」という規定を置くことにより、この問題を解決しました。

 相続の放棄をしようとする者は、3か月以内にその旨を家庭裁判所に申し出る必要があります。

被相続人が日本に住んでいた場合などは、日本の家庭裁判所に放棄の申述をすることができますが、韓国内に相続債務がある場合には、韓国の家庭法院に対しても相続放棄の申告をする必要があります。

あなたは、重大な過失なくして債務の存在を知らなかったわけですから、父の債務の存在を知った時から3か月以内に日本の家庭裁判所に限定承認の申述をすることができます。

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ、被相続人の残した債務について責任を負うというもので、あなたが、相続財産以上の債務を相続することはありません。